デイサービスで摘便はOK?介護職員ができること・できないことを解説

デイサービスを利用しているご家族や介護職員から、「便秘でつらそうな利用者に摘便(直腸に指を入れて便を取り出す行為)はしてもらえるのか?」という質問を耳にすることがあります。
摘便は排泄介助の一つに見えますが、実際には医療行為にあたるため、介護職員がデイサービスで対応できるかどうかは制度上の制限があります。
本記事では、デイサービスでの摘便の取り扱いについて、できること・できないことを整理し、家族や現場職員が知っておくべき対応策をわかりやすく解説します。
摘便とは?医療行為にあたるのか
摘便とは、直腸内に指を挿入して硬くなった便を取り出す行為です。便秘が重度になった場合に行われる処置で、即効性があります。
しかし厚生労働省の見解では、摘便は医師や看護師が行うべき「医療行為」 に該当します。そのため、介護職員が独自の判断で行うことはできません。
デイサービスで摘便はできるのか?
介護職員は原則NG
デイサービスは介護保険サービスの一つであり、基本的に介護職員は 医療行為を行えません。よって、介護福祉士やヘルパーが利用者に摘便をすることは認められていません。
看護師が配置されていれば可能
デイサービスに看護師が常勤・配置されており、さらに医師の指示書がある場合には、看護師が摘便を行うことは可能です。ただし全てのデイサービスに看護師がいるわけではありません。
喀痰吸引等研修を修了した介護職員
一部の介護職員は「喀痰吸引等研修」を修了していれば、特定の医療行為を実施できる制度があります。ただし摘便は対象に含まれていないため、介護職員が実施することは認められていません。
デイサービスで便秘がある場合の対応策
1. 看護師に相談する
看護師が配置されているデイサービスであれば、医師の指示に基づいて摘便を行うことができます。便秘が慢性化している場合は、主治医に「指示書」を書いてもらいましょう。
2. 家族に連絡する
看護師がいない事業所の場合は、便秘の状況を家族に報告し、家庭で医療機関を受診するよう促す対応が一般的です。
3. 医療機関への受診
発熱や強い腹痛を伴う場合は、デイサービスから医療機関に搬送することが必要です。便秘が続くと腸閉塞や腹部膨満など重篤な症状に発展することもあります。
デイサービスでできる「便秘予防」の支援
介護職員は摘便自体はできませんが、便秘を予防するための支援は行えます。
- 水分摂取を促す
- 食物繊維を多く含む食事を提供する
- 適度な運動や体操を実施する
- 排便リズムを整えるためにトイレ誘導を行う
- 服薬状況を確認し、必要に応じて医師に報告する
これらの支援は介護職員が日常業務として行える範囲であり、利用者の便秘改善につながります。
家族が知っておくべきポイント
事前に医師へ相談しておく
便秘が慢性的に続いている方は、かかりつけ医に相談し、必要に応じて「摘便の指示書」を発行してもらいましょう。
看護師配置のあるデイサービスを選ぶ
医療的ケアが必要になる可能性がある場合は、看護師が常勤しているデイサービスを選ぶことが望ましいです。
介護職員への無理な依頼は避ける
「介護だからやってくれるはず」と思って摘便を依頼するのは誤解です。職員にとって法的リスクがあるため、必ず医療職に相談することが重要です。
摘便に関連するよくあるQ&A
Q. デイサービスで便秘になったら必ず病院に行くの?
A. 軽度であれば様子を見ながら食事・水分・運動などで調整します。強い腹痛や発熱を伴う場合は医療機関を受診します。
Q. デイサービスに医師は常勤している?
A. 基本的に医師は常勤していません。看護師が配置されている場合のみ、医師の指示書をもとに医療的ケアが可能です。
Q. 家族が持参した座薬や浣腸なら介護職員が入れてくれる?
A. これも医療行為にあたるため、介護職員が行うことはできません。看護師がいる場合のみ、医師の指示に基づいて対応可能です。
まとめ
デイサービスでの摘便は、介護職員は行うことができず、看護師が医師の指示書に基づいてのみ可能です。
便秘が気になる方は、主治医に相談して医療的な対応方針を確認し、必要なら看護師が配置されたデイサービスを選ぶと安心です。
介護職員は便秘そのものを治療することはできませんが、日常生活の中で予防支援を行うことは可能です。
制度上のルールを理解し、医療と介護の役割を分担することで、安全で安心できるサービス利用につながります。